森岡茂夫熊野くらし工房一級建築士事務所|横浜で活動し熊野にUターンした建築家のサイトです。

コラム

□大工さんに頼むから建築士は要らない?

この質問を聞かれるたびに、いつも痩せるおもいがします。(笑
確かに、日本の大工さんは優秀だから間取りの希望を伝えれば家を建ててくれます。
だったら、なぜ建築士の資格があるの?
その理由は、設計と施工を分けるためです。
医療の世界では医薬分離といって、お医者さんは薬を販売してはいけません。
西洋では昔からそうなっています。医師が薬を売ると・・・まあ、想像はつきますね。
建築も同じように、欧米では建築家は施工会社に所属してはいけません。
工事のチェックは施工会社と利害関係がない建築士に依頼した方が安心ですね。

■建築家は建築主の代理人

建築家は、建築主の夢や希望を設計図書にまとめ、施工会社は設計図書にしたがって工事を進めます。
工事が始まれば、建築家は工事が設計図書通りに行われているかをチェックします。
設計図書を作成したり工事の品質をチェックするのには充分な経験と専門知識が必要ですが、それらを建築主に代わって行うのが建築家です。
建築家は、建築主から委任を受けた代理人なのです。
しかし、代理人だからといって建築主の希望をすべて受け入れるわけではありません。
法律に違反していたり、周りの景観を損なうような要望に対しては「ノー」と言います。
その理由は、建築はたとえ個人の財産であっても、社会の資産でもあるからです。

□設計ができない建築士がいるってホントウ?

ホントウです。
わが国には30万人以上の一級建築士がいますが、その内、設計・監理を専業とする一級建築士は3〜5万人と言われています。
つまり、設計を行ったことがない一級建築士の方が圧倒的に多いのです。
なぜ設計ができない一級建築士がいるかというと、それは建築士の法律が敗戦後の混乱期につくられたからです。
1日でも早く国を再建するために、建築に関わっている大工さんや現場監督・学者・役人にも建築士の資格を与えたのです。
分かりやすくいうと、非常時に薬剤師や看護師さんにも医師の免許を与えたようなものです。
超高層が建ち並び、高い設計能力が要求されるようになった今、建築士には高度な専門知識と充分な経験が必要とされます。
設計を依頼するときは、一級建築士の能力をよく見究める必要があります。

■家づくりのスケジュール

ハウスメーカーに依頼したときと、建築家をパートナーに選んだときのいちばんの違いは家が完成するまでの期間です。
あるハウスメーカーの場合は、展示場に行った翌日には営業担当者が無料で現地調査を行い、数日後には間取りの提案を行うこともあるそうです。
営業担当との出会いから家の完成までわずか4〜5ヶ月、早いですね。
建築家に頼んだ場合は、その2〜3倍は時間がかかります。
営業担当者が勧める家を購入するのか、時間がかかっても建築家といっしょにプランや素材を考えながら家づくりを楽しむのか、そこが大きな違いです。